真っ黒ブログ

黒色って 素敵

Scene.39「第四試合 武と武」

「ファルガム。」
アゼルはただ名前を呼ぶ。

「はッ。」
ファルガムはそれに短く答えただけである。
二人はこれだけで事足りるのである。

「わうわむ〜」
ファビオラが両手を振ってファルガムを応援する。
ファルガムは振り返らず、右手を上げてそれに答える。

   
「ギグリット。」
ライラールが杖でファルガムを指す。
「あの野郎に勝てるとしたら、お前だけだ。頼むぞ。」
“お前なら勝てる”などというおべっかをつかって、
無理に鼓舞しないあたり、ライラールらしいと言えるだろう。

「殿、お任せを。」
棍棒を振り上げ、ギグリットが答える。
そして、そんなおべっかは彼には不要なものでもあるだろう。

「ギグ兄ぃ、がんばって〜」
リオがギグリットに声援を送る。
ギグリットもファルガムと同様に、振り返らず右手を上げてそれに答えた。

「始!」
ライラールの掛け声。
だが、二人とも微動だにしない。

「お初にお目にかかる。」
「拙者の名はギグリット。」
「その武勇、その生き様、拙者の耳にも届いております。」
「ファルガム殿の生き様こそ、拙者の目標とすべきものであります。」
ギグリットが深々と頭を下げる。

「ほう・・・して、どうされる?」
ファルガムが“黒竜の牙”を抜く。
「飾らぬ御仁よ。」

「何も。」
ギグリットが頭を上げる。
「拙者が貴殿を尊敬しているのは、私事。」
「拙者が貴殿を倒すのは、公事。」
「秤に掛けることすら、おこがましい。」
ギグリットが構える。

「よかろう、その心意気や好し。」
ファルガムも構える。

「竜の息吹はこの足に、猛き血潮はこの胸に。」
「地竜、ドヌルイル、揺るがぬ勝利をわが腕に。」

ギグリットの使う精霊、ドヌルイル。自身の能力を強化すると言う単純なものである。
飾らないことを自身の旨とする如何にも彼らしい能力である。
そして、単純であるが故、攻略法は無い。
純粋に彼の力を上回らなければならないのである。
まさに一対一の為に有るような能力である。

素早く間合いを詰めるファルガム。
「そのか細い棒で、受けられるか?」
ファルガムが大剣を振りかざす。

「できませぬ。」
そういって、ギグリットが棍棒でファルガムの一撃をいなす。
「しかし、戦いようはある。」
そのまま、踏み込む。

「軽い!」
ファルガムの崩れた体勢のままの体当たり。

「ぬう。」
たっぷり体重の乗った体当たりをその身に受けて、
ギグリットが一歩下がる。

下がった勢いそのままに回転し、棍棒を振るう。

ファルガムは大剣で棍棒を捌き、またも振りかぶった一撃。

体当たりを警戒して、一歩はなれた間合いで、大剣をいなし、
その勢いを利用し、棍棒が風を切る。

捌ききれないと判断したファルガムは、一歩引いてかわした。

「その水のような体捌き、流石という他無い。」
「が、コレならばどうだ。」
ファルガムが大剣を縦にして、横に薙ぐ。

ギグリットはいなすわけにもいかず、棍棒で受け止める。
そのまま、吹き飛ぶ。

ファルガムが飛び上がり、背中の漆黒の翼を大きく広げ、
剣を構え急降下する。

舞い上がる土煙。
その中、ライラールがファルガムの一撃を杖で受け止めていた。
「やっぱ強えーな、オッサン。」
「さて、五分と五分になったな・・・アゼル!」
不適に笑うライラールの指差した先には、
やはり不適に笑うアゼルがいた。

 

 

次の話

  1. 2009/01/13(火) 01:38:43|
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