「ファルガム。」
アゼルはただ名前を呼ぶ。
「はッ。」
ファルガムはそれに短く答えただけである。
二人はこれだけで事足りるのである。
「わうわむ〜」
ファビオラが両手を振ってファルガムを応援する。
ファルガムは振り返らず、右手を上げてそれに答える。
「ギグリット。」
ライラールが杖でファルガムを指す。
「あの野郎に勝てるとしたら、お前だけだ。頼むぞ。」
“お前なら勝てる”などというおべっかをつかって、
無理に鼓舞しないあたり、ライラールらしいと言えるだろう。
「殿、お任せを。」
棍棒を振り上げ、ギグリットが答える。
そして、そんなおべっかは彼には不要なものでもあるだろう。
「ギグ兄ぃ、がんばって〜」
リオがギグリットに声援を送る。
ギグリットもファルガムと同様に、振り返らず右手を上げてそれに答えた。
「始!」
ライラールの掛け声。
だが、二人とも微動だにしない。
「お初にお目にかかる。」
「拙者の名はギグリット。」
「その武勇、その生き様、拙者の耳にも届いております。」
「ファルガム殿の生き様こそ、拙者の目標とすべきものであります。」
ギグリットが深々と頭を下げる。
「ほう・・・して、どうされる?」
ファルガムが“黒竜の牙”を抜く。
「飾らぬ御仁よ。」
「何も。」
ギグリットが頭を上げる。
「拙者が貴殿を尊敬しているのは、私事。」
「拙者が貴殿を倒すのは、公事。」
「秤に掛けることすら、おこがましい。」
ギグリットが構える。
「よかろう、その心意気や好し。」
ファルガムも構える。
「竜の息吹はこの足に、猛き血潮はこの胸に。」
「地竜、ドヌルイル、揺るがぬ勝利をわが腕に。」
ギグリットの使う精霊、ドヌルイル。自身の能力を強化すると言う単純なものである。
飾らないことを自身の旨とする如何にも彼らしい能力である。
そして、単純であるが故、攻略法は無い。
純粋に彼の力を上回らなければならないのである。
まさに一対一の為に有るような能力である。
素早く間合いを詰めるファルガム。
「そのか細い棒で、受けられるか?」
ファルガムが大剣を振りかざす。
「できませぬ。」
そういって、ギグリットが棍棒でファルガムの一撃をいなす。
「しかし、戦いようはある。」
そのまま、踏み込む。
「軽い!」
ファルガムの崩れた体勢のままの体当たり。
「ぬう。」
たっぷり体重の乗った体当たりをその身に受けて、
ギグリットが一歩下がる。
下がった勢いそのままに回転し、棍棒を振るう。
ファルガムは大剣で棍棒を捌き、またも振りかぶった一撃。
体当たりを警戒して、一歩はなれた間合いで、大剣をいなし、
その勢いを利用し、棍棒が風を切る。
捌ききれないと判断したファルガムは、一歩引いてかわした。
「その水のような体捌き、流石という他無い。」
「が、コレならばどうだ。」
ファルガムが大剣を縦にして、横に薙ぐ。
ギグリットはいなすわけにもいかず、棍棒で受け止める。
そのまま、吹き飛ぶ。
ファルガムが飛び上がり、背中の漆黒の翼を大きく広げ、
剣を構え急降下する。
舞い上がる土煙。
その中、ライラールがファルガムの一撃を杖で受け止めていた。
「やっぱ強えーな、オッサン。」
「さて、五分と五分になったな・・・アゼル!」
不適に笑うライラールの指差した先には、
やはり不適に笑うアゼルがいた。
次の話
- 2009/01/13(火) 01:38:43|
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